経営セーフティ共済のメリットとデメリットをわかりやすく解説
こんにちは。江東区で税理士をしている中明です。
経営セーフティ共済について、掛金が経費になるといった事を耳にしたことがあるものの、具体的にどのような制度なのか、どうやって入ればいいか等がよくわからないという方も多いのではないでしょうか。今回はそんな方向けに経営セーフティ共済を分かりやすく解説していきます。
目次
1.そもそも経営セーフティ共済とは?
経営セーフティ共済とは、正式には「中小企業倒産防止共済制度」という名前で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。その名前の通り取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産したり経営難に陥ったりすることを防ぐことを目的とした共済制度です。
簡単にいえば、共済に加入して掛金を払っておくことで、取引先が倒産してお金が必要な時にすぐ借入できるという制度です。
また加入事業者数は全国で約54万社と、多くの事業者が加入しています。
[経営セーフティ共済のHP]
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
2.メリット
経営セーフティ共済のメリットは大きく4つです。
① 取引先が倒産後すぐに借入できる
取引先が倒産した場合に無担保・無保証人、無利子で最大8,000万円の借入ができます。
②長期で加入し続けることで自己負担がゼロになる
40ヶ月分以上掛金を納付していれば、それまでに払った掛金総額の100%分の解約手当金が受け取れます。そのため、長期で加入していれば、万が一の時は上記①のメリットを受けられる上、掛金についても自己負担はゼロになります。
③掛金が経費になる
掛金は全額必要経費(損金)に算入することができます。掛金の月額は5千円~20万円の範囲で自由に選べますが、例えば掛金月額をMaxの20万円として場合、240万円を必要経費にすることができます。(掛金は800万円まで積立が可能)
ただし、解約手当金は益金として課税されますので、トータルでの税負担は変わりません。
そのため、基本的には課税の繰り延べになりますが、退職金等をうまく合わせることで節税効果も期待できます。会社によって状況が異なりますので、詳細は顧問税理士等に相談されるとよいと思います。
なお、個人事業主の場合は事業所得についてのみ必要経費として算入できますので注意が必要です。
(2024年10月改正)
2024年に経費算入について改正がありました。
「令和6年10月1日以降に共済契約を解除し、再度共済契約を締結(再加入)した場合、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金については、必要経費または損金の額に算入できません。」とされており、再加入した場合には経費算入に制限がかかることになりました。
[中小機構HP 税制の特例に関する内容の変更について]
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/news/2024/aihbak0000001tdr.html
経営セーフティ共済の、取引先が倒産したときの連鎖倒産や経営難を防ぐための制度というそもそもの趣旨から外れて節税目的で利用されることが多かったため制限が入った形です。
ただし、解除後即再加入を行う方はそこまで多くはないと思いますので、そこまで大きな影響はないかもしれません。もし再加入などを検討されている場合は注意しましょう。
④掛金の増額・減額が可能、また任意のタイミングで解約も可能
掛金の月額は5千円~20万円の範囲で自由に選べます。この掛金月額は加入後も増額・減額できます(減額の場合は一定の要件が必要になります)。
3.デメリット
デメリットは大きく2つあります。
①短期で解約すると、掛金の全額はかえってこない
任意のタイミングで解約は可能ですが、12カ月未満はそれまでの掛金の全額がかえってこないことには注意が必要です。また40か月以下の場合も全額は戻りません。下表の「任意解約」の通り、12か月以上~40か月未満ではかえってくる金額は、80%~95%となっています。前述の通り、加入後の掛金月額の減額も可能ですが、無理のない金額を設定するようにしましょう。
②借入を行った場合、支払済みの掛金総額が減る
借入を行った場合は、借入額の10%にあたる額が支払い済みの掛金から控除されます。この控除された掛金部分は、解約手当金の権利も失われてしまい、解約時にかえってきませんので注意が必要です。
また実質的に借入額の10%分の利息を払っていることになるため、安易な借入れは行わないようにしましょう。
4.加入できる人は?
1年以上継続して事業を行っている中小企業者で、かつ下表の「資本金等の額」または「従業員数」のいずれかに該当する会社であれば、加入することができます。
そのため、開業したての方は加入できないので注意が必要です。
また、法人のみでなく個人事業主も加入できます。
5.加入方法(窓口)は?
取引のある銀行や商工会・商工会議所等が加入の窓口となっています。
融資取引がある銀行や、口座を開いてから1年以上経過している銀行等である必要があります(当座預金の場合は1年未満可)。
なお、ネット銀行等は加入窓口となっていない場合がありますので注意しましょう。
6.加入に必要な書類は?
法人の場合は申込書の他に、以下の書類を用意する必要があります。
・登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の原本(発行から3か月以内)
・法人税の確定申告書(直近の決算書等の添付書類を含む)
・法人税を納付したことを証する「納税証明書(その1)」や領収書
7.まとめ
・経営セーフティ共済は取引先の倒産時にすぐに借入ができる共済制度
・掛金は月5千円~20万円で自由に設定でき、全額が経費(損金)になる
・40ヶ月以上掛金を納付することで、掛金全額がかえってくる
・1年以上事業を行っている中小企業者が加入でき、銀行等で手続きできる
今回は経営セーフティ共済について解説してきました。様々なメリットがあり、長期で加入し続けることで自己負担もなくなる制度ですので、うまく活用していきたいですね。
清澄会計事務所では、中小企業の支援に力を入れております。税金等でお悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。