青色事業専従者給与のデメリットや注意点をしっかりおさえられていますか?

こんにちは。公認会計士・税理士の中明です。

個人事業主の節税方法として人気の青色事業専従者給与ですが、メリットのみでなく、デメリットや注意点もしっかりおさえられていますか?

配偶者や親族に支払った給与が経費になるため節税になる、といったメリットもありますが、デメリットや注意点をしっかりおさえておく必要があります。

届出を出しておけば給与が経費になって節税できる、くらいの感覚でいると、そもそも節税になっていなかったり、誤った処理をしてしまっていたり(その結果として税務調査で指摘されるリスクが上がったり)する可能性があります。

今回はそんな青色事業専従者給与について分かりやすく解説していきます。

目次

①青色事業専従者給与ってそもそも何?

②青色事業専従者給与の要件は?

③メリットは?

④デメリットや注意点は?

⑤まとめ

①青色事業専従者給与ってそもそも何?

まずは青色事業専従者給与ってそもそも何?という方向けに簡単に解説していきます。

個人事業主が生計を一にしている配偶者や親族が納税者に給与を支払っても、基本的に支払った給与は必要経費にはなりません。

ただし、一定の要件を満たす場合はこの支払った給与を「青色事業専従者給与」として必要経費に含めることができます

なお、青色事業専従者として給与を支払う場合は、配偶者(特別)控除や扶養控除は使うことができません。(控除対象配偶者や扶養親族になれません)

ちなみに、白色申告の場合は「事業専従者」という特例がありますが、今回は解説を省略します。

青色事業専従者給与の要件は?

青色事業専従者給与になる要件をざっくりといえば、①事前に届出を税務署に提出し、②その配偶者等が年の半分以上はその事業のために働いていて、③届出の通りに給与を支払い、④その給与の額が仕事の内容に見合っていることです。

要件の詳細は、次のとおりです。

(1)対象となる人の要件

次の要件のいずれにも該当する人が青色専従者になれます。

イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。

ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

ハ その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

(2)届出の要件

「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ届け出る必要があります。

提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日までです。

なお、その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内までです。

(3)支払の要件

上記(2)の届出書に記載されている方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。

(4)その他の要件

青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。

なお、過大とされる部分は必要経費とはなりません。

<国税HP No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除>

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm

メリットは?

青色事業専従者給与は必要経費に算入することができるので、個人事業主本人の所得税や住民税の節税効果が期待できます。

また、所得を得た家族が資産形成することができるので、結果的に将来の相続税や贈与税を少なくする効果も期待できます。

デメリットや注意点は?

青色事業専従者の所得税や社保の負担

上記③の節税効果を大きくするためには、配偶者等への支払額を大きくする必要がありますが、金額によっては配偶者等に所得税や社会保険料の支払い負担が発生することになります。

また青色事業専従者給与の要件である、「労務の対価として相当であると認められる金額」という点にも注意が必要です。一般的な水準とかけ離れた給与を支払っている場合は、税務調査で認められない可能性が高くなりますので注意が必要です。

各種控除が使えなくなる

青色事業専従者となった配偶者や親族については配偶者(特別)控除や扶養控除が使えなくなります。そのため、給与の支払額があまり大きくない場合はそもそも節税メリットより手間の方が大きい、といった事になりかねませんので注意が必要です。

仕事内容や労働時間などは記録しておく

配偶者や親族ということで管理があいまいになっていることも多いかと思いますが、どのような仕事をして、どれだけ働いたのかを後で確認できるようにしっかりと記録しておくことが重要です。

青色事業専従者給与はしっかり払う

資金繰りが悪くなった等の理由から、給与を実際には支払っていない場合は注意が必要です。

上記の要件にもある通り、実際に給与を支払っている必要があります。そのため、給与の支払額は節税だけでなく、資金繰りなども考えて無理のない金額で設定する必要があります。

他でパートやアルバイトをしてよいか?

税務調査等で指摘される可能性が高いため基本的にお勧めできません。青色事業「専従者」という名称からもわかる通り、基本的にその事業に専ら従事している必要があります。

まとめ

今回は青色事業専従者給与について解説してきました。配偶者や親族への給与の支払いを必要経費にできるメリットはありますが、各種控除が使えなくなったり、その他色々と注意すべき点があったりします。利用の際はしっかりと要件等をチェックするようにしましょう