役員社宅とは?メリットとデメリットを分かりやすく解説

こんにちは。公認会計士・税理士の中明です。今回は役員社宅について解説していきます。役員社宅は節税効果があると耳にしたことはあるが、実際にはどのような制度かよくわからないという方も多いのではないでしょうか。今回はそんな方向けに、役員社宅のメリットとデメリットを分かりやすく解説していきます。

目次

①そもそも役員社宅とは?

②メリットは?

③デメリットや注意点は?

④賃料相当額はどうやって決めるの?

⑤まとめ

そもそも役員社宅とは?

役員社宅とは、会社が契約した住宅を役員に社宅として貸し出す制度です。役員側から会社へ一定額の家賃を支払う等の要件を満たす場合には、会社側では負担分を経費にでき、また役員側では給与所得として課税対象にならないというメリットがある制度です。また法人の規模に関係なく、1人法人でも導入できます

メリットは?

役員社宅制度を導入するメリットは大きく3つあります。

(1) 節税効果を期待できる

役員社宅制度を導入する大きなメリットとして節税効果を期待できることが挙げられます。会社側の負担分は経費になるため、その分利益が減少し、法人税が減ることになります。

(2) 役員の可処分所得を増やすことができる

役員報酬でなく、社宅として家賃負担が軽減されることにより、所得税や住民税等の負担が減り、可処分所得が増えることになります。

(3) 社会保険料の負担を減らすことができる

役員報酬についても社会保険料が発生しますが、役員社宅制度を導入して会社が負担する家賃分だけ役員報酬を減額することで、役員の実質の給与を減らすことなく、社会保険料を減らすことが可能となります。

なお、役員社宅制度を利用した場合でも現物給与の要件等に当てはまり結果的に社会保険料がかかってしまうこともありますので、詳細は専門家に確認するようにしてください。

デメリットや注意点は?

(1) 会社で契約する必要がある。

社宅制度を導入するためには、対象の住宅を会社が購入もしくは賃貸する必要があります。役員個人の名義だと社宅とは認められず給与として課税される可能性がありますので必ず会社で契約するようにしましょう。

なお、役員が今住んでいる住宅を役員社宅にすることも可能ではありますが、税務調査などで住宅手当と判断される可能性がありますので、新しく社宅用の住宅を用意する方がベターです。

(2) 家賃以外の費用で経費にならないものもある

電気代や水道代等の水道光熱費は会社の経費にはならず、役員個人が負担する必要がありますので注意しましょう。

(3) 住宅ローン控除は適用できない。

社宅制度は前述の通り、会社が契約を行う必要があるので、個人の住宅ローン控除を適用することはできない点には注意が必要です。

(4) 社内規定を定める必要がある

社宅制度を導入するには、社内規定を定める必要があります。すでに従業員の社宅制度がある場合も、役員社宅については別途規定を定める必要がありますので注意しましょう。

(5) 床面積で負担すべき家賃の計算方法が変わってくるので注意

社宅制度を導入する場合、役員から会社へ1か月あたり一定額の家賃(賃貸料相当額)を支払う必要があります。役員の負担額をこれ以下にすると給与扱いになってしまい、役員側で給与所得として課税されてしまうので注意が必要です。

賃料相当額はどうやって決めるの?

一般的には、会社が実際に支払っている家賃の半分を役員から会社へ支払うケースが多いです。

詳細に賃料相当額を計算する場合は、下表の通りです。

役員社宅制度で節税をするためには、国税庁の定めた賃借料相当額を役員から会社へ支払う必要があります。この賃借料相当額の計算方法は、住宅の床面積によって3つに分かれています。なお、3つのうち、豪華住宅については使用料相当額を役員から受け取ることになるため節税効果はありません。

また、下表の通り賃料相当額は固定資産税の課税標準額を使って計算しますが、この課税標準額は3年に1度評価替えが行われます。課税標準額が変更になった場合は賃料相当額も変更しなければいけませんので注意しましょう。

社宅の種類社宅の種類の判定賃料相当額
①小規模な住宅<法定耐用年数が30年以下の建物の場合>
床面積が132平方メートル以下である住宅

<法定耐用年数が30年を超える建物の場合>
床面積が99平方メートル以下である住宅

(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)
次の(1)から(3)までの合計額が賃貸料相当額になります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
②小規模な住宅以外①小規模な住宅及び③豪華社宅に該当しない住宅社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅等を役員へ貸与しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が異なります。

(1)自社所有の社宅の場合
次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12パーセント
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく、10パーセントを乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6パーセント

(2)他から借り受けた住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
③豪華社宅床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。
なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
通常支払うべき使用料に相当する額

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm

⑤まとめ

・役員社宅制度とは、会社が契約した住宅を役員に社宅として貸し出す制度

・会社負担分が経費となるため節税効果があり、また役員の可処分所得が増える効果も期待できる

・社宅は会社が契約する必要があり、また住宅ローン控除が適用できない点に注意が必要

・賃料相当額は社宅の床面積によって計算式が異なるので注意

今回は役員社宅制度について解説してきました。節税効果等が期待できますので、ぜひうまく活用したい制度ですね。

清澄会計事務所では、フリーランスや中小企業向けのお役立ち情報を定期的に発信しております。税金や融資、補助金等でお悩みの方はお気軽にご相談ください。