役員貸付金はデメリットばかり!その理由と解消方法などを分かりやすく解説

こんにちは。公認会計士・税理士の中明です。今回は役員貸付金について説明していきます。スタートアップや中小企業ではこの役員貸付金が発生している企業をしばしば見かけることがあります。いつの間にか貸付額が多額になってしまったというケースもありますが、役員貸付金は様々なデメリットがありますので注意が必要です。

今回は役員貸付金のデメリットと発生させない方法や解消方法について分かりやすく説明していきます。

目次

① そもそも役員貸付金とは

② 役員貸付金のデメリット

③役員貸付金を発生させないようにするには?

④ 役員貸付金はどうやって解消すればいい?

⑤まとめ

そもそも役員貸付金とは

「役員貸付金」とは会社が役員にお金を貸すことです。役員側からすれば、会社からお金を借りている状態です。

法人の財布(口座)と個人の財布が別なので、社長であっても法人のお金を勝手に引き出して使うと社長に対する貸付金として計上されます。一時的に個人的な支出が必要となって引き出してすぐに返済する場合には結果的に問題ありませんが、日常的に会社のお金を役員が持ち出し、返済がされない状態が続くと役員貸付金の残高がどんどん大きくなっていきます。

役員貸付金のデメリット

・税務調査でのリスクがある

役員貸付金は税務調査で指摘される可能性が高いです。そして役員貸付金が長い期間返済されず、利息の計上もされていない場合には役員賞与とみなされる可能性があります。

また役員が貸付金を返済できず、会社が債権放棄した場合も役員賞与とみなされてしまうリスクがあります。

役員賞与とみなされた場合、以下のような負担が増えることになります。

役員賞与とみなされた場合>

・役員側:所得税や住民税の対象となる(税金が増える)。また社会保険料も増える。

・法人側:経費(損金)にならない。また源泉徴収義務があるにも関わらず源泉徴収が漏れていたことになるため、源泉所得税を追加で払うことになる。

・金融機関からの印象が悪くなる

金融機関から融資を受ける時には、決算書の提出を必ず求められます。その決算書に役員貸付金が計上されていると金融機関は良くない印象を持ちます。

役員貸付金は、一般的な貸付金と異なり、なかなか返済されない場合も多く、また役員が会社のお金を私的に使っているように疑われるからです。そのため、銀行は今回会社に貸すお金ももしかしたら個人的な目的で使われるのではないかと警戒し、マイナスの印象を持たれて融資を受けづらくなる可能性があります。

もちろん役員貸付金があるから融資が絶対に受けられないということはありませんし、私のお客様でも役員貸付金があっても融資を受けられたお客様は多くいらっしゃいますが、マイナスの印象を持たれることは覚悟しておきましょう。

・利息が発生する

役員に対して貸付を行った場合、外部への貸付金と同様に相当の利息を受け取る必要があります。利率については国税庁(以下のサイト参照)のホームページに記載されている利率を使うことになります。

<国税庁HP, No.2606 金銭を貸し付けたとき>

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm

社が利息を受け取ると利益が増えるので、その分法人税が増えることになります。

なお、この利息を受け取っておかないと前述の通り役員賞与として認定されてしまう可能性があります。

役員貸付金を発生させないようにするには?

ここまで説明したように役員貸付金は百害あって一利なしです。ではこの役員貸付金を発生させないためにはどうすれば良いのでしょうか。

・会社のお金と個人のお金の区別を徹底する

大前提として会社のお金と個人のお金は別であるという意識を持つことが大事です。特に個人事業主から法人成りをした1人会社のような場合、会社の財布=自分の財布という個人事業主時代の考えが抜けきらずに自由に会社の口座からお金を引き出すケースが多く見られます。たとえ役員であろうと、会社からお金を受けとれるのは基本的に役員報酬と立替経費の精算のみということを覚えておきましょう。

・役員報酬の設定を適正にする

役員貸付金が発生してしまっている会社のもう1つの典型例が、役員報酬を低く設定しすぎているということです。

社会保険料や所得税を抑えるために役員報酬を低めに設定したことで個人の生活費が役員報酬では足りず、追加で会社からお金を引き出してしまって役員貸付金が増加していくというものです。たしかに社会保険料の負担は重く、役員報酬を低めに設定したいという気持ちはよくわかりますが、その前提には生活費をカバーできる額であるということが必要です。

よく役員報酬を設定する際に税額や社会保険料のメリットを強調するようなサイトを見かけますが、税額等のメリット以前にその報酬額で生活費を問題なくカバーできることが大前提になります。役員貸付金を発生させないために適正な金額に役員報酬を設定するようにしましょう。役員報酬の決め方についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。

役員貸付金はどうやって解消すればいい?

役員貸付金は発生させないことが大事と説明してきましたが、既に発生してしまっている会社もあるかと思います。ここでは、役員貸付金を解消するための代表的な方法を説明していきます。

・役員報酬の中から返済していく

一番代表的な方法がこの方法です。役員報酬の中から毎月返済していくことで役員貸付金の額を減らしていくことが可能です。ただしこの場合、返済分も考えて役員報酬を高めに設定する必要があるので所得税や住民税、社会保険料などの負担は増加します。

・役員所有の資産を法人に売却する

もう1つの方法として役員が所有する資産を法人に売却することが考えられます。例えば土地や建物、車などの資産を法人に売却し、その売却代金で会社に返済を行う方法です。この場合、不動産などは会社から法人に名義変更するための移転登記が必要であることや、資産を売った役員側で売却益が生じた場合には確定申告が必要になるなどといった注意点があります。

その他、退職金を返済に充てるといった方法もありますが、今回は説明を省略します。

まとめ

今回は役員貸付金について解説しました。役員貸付金はデメリットばかりなので可能な限り発生させないこと、発生してしまった場合でもなるべくすぐに解消させることを徹底するようにしましょう。

清澄会計事務所では個人事業主・中小企業向けに幅広くサービスを提供しております。なにか不安な点や税務・経営でお困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。