創業融資の基礎知識② 公庫融資と制度融資どっちがいいの?
こんにちは。江東区で税理士をしている中明です。
前回の解説記事では、創業融資には日本政策金融公庫の創業融資と制度融資の2種類があるということについて解説をしました。今回はこちらの2つの創業融資制度について比較して、どちらがおすすめか解説していきたいと思います。
目次
1.はじめに
いきなり結論を言ってしまいますが、私は日本政策金融公庫の創業融資の方がおすすめだと考えています。もちろん各々にメリットデメリットがありますが、総合的に勘案すると日本政策金融公庫の創業融資に軍配が上がると思います。
では各々の制度の特徴を見ていきましょう!
2.日本政策金融公庫の新創業融資制度
●制度対象:税務申告を2期終えていない方
●融資限度額:上限は3,000万円(運転資金1,500万円)
※制度上は上記が限度額ですが、実務上は1,000万円が限度となります。
●返済期間:運転資金7年以内、設備資金20年以内
●金利:2~3%程度
●保証料率:なし
●自己資金要件:1/10
●担保・保証人:無担保・無保証
●据置期間:2年以内
※据置期間とは元本の返済を猶予してもらえる期間のこと
●申し込みから融資実行までの期間:約1ヶ月程度
3.制度融資(東京都の場合)
●制度対象:創業5年以内
●融資限度額:上限は3,500万円
※23区の場合は上限1,000万円~2,000万円が多いです
●返済期間:運転資金7年以内、設備資金10年以内
●金利:1~2%程度
●保証料率:所定の料率
※1/2の補助制度あり
●自己資金要件:なし
●担保・保証人:無担保だが社長は保証人となる必要あり
●据置期間:1年以内
※据置期間とは元本の返済を猶予してもらえる期間のこと
●申し込みから融資実行までの期間:約2~3ヶ月程度
簡単に下記の表にまとめてみました。
項目 | 公庫融資 | 制度融資 |
---|---|---|
対象 | 税務申告を2期終えていない方 | 創業5年以内 |
融資限度額 | 3,000万円(運転資金1,500万円) ※制度上は上記が限度額ですが、実務上は1,000万円が限度となります。 | 上限は3,500万円 |
返済期間 | 運転資金7年以内、設備資金20年以内 | 運転資金7年以内、設備資金10年以内 |
金利 | 2~3%程度 | 1~2%程度 |
担保・保証人 | 無担保・無保証 | 無担保だが社長は保証人となる必要あり |
4.それぞれのメリット
まず公庫融資のメリットの一つ目は無担保無保証であるという点です。借入は通常第三者や代表者による保証が必要となるケースが多く、これを突破するのが難関になります。しかし公庫については担保および第三者・代表者の保証の両方が不要であり、申請のハードルがグッと下がっています。保証が不要というのは心理的にも創業者にとって大きなメリットになります。
また公庫は融資の申請を行ってから融資決定・着金まで約1ヶ月程度とスピーディなスケジュールとなっております。制度融資の場合には2~3ヶ月かかることが多く、すぐにでもお金のほしい創業者にとって公庫の創業融資の着金までの早さは大きなメリットになります。
さらに公庫融資が制度融資より優れている点として自己資金額よりも大きい金額を借りることができるという点も挙げられます。制度融資の場合には自己資金額と同じ金額が借入の上限額とされることも多々あります。一方で公庫では自己資金額を超える額についても借入が可能となりますので、創業当初の厳しい財政状況下では大きな魅力となります。
一方で制度融資のメリットとして挙げられるのは、金利が創業融資に比べて低く抑えられることが多いということです。制度融資の場合には公庫融資よりも低い金利に加えて信用保証料が設定されているため、これらを合算すると公庫の金利と大差がなくなってしまうのですが、制度融資には地方自治体による「利子補給制度」や「保証料補助制度」といった金利や保証料の一部を地方自治体が援助してくれるという制度があります。この制度を利用した場合には金利と信用保証を合算した額が公庫の金利に比べて低くなることがあります。創業当初の資金余裕のない時期では支払額が少なく済むことは魅力的であると言えます。
5.まとめ
上記のように多少金利面で制度融資が好条件であるものの、その他の面では公庫融資が魅力的であると言えます。創業融資をお考えの際は、まずは日本政策金融公庫の新創業融資制度をおすすめします。